電子書籍vs紙書籍『脳を創る読書』

脳を創る読書
脳を創る読書
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酒井 邦嘉
実業之日本社
売り上げランキング: 271,799
 この本は紙の本vs電子書籍という論点で、紙の本派の著者の主張が述べられていそうだったから、電子書籍大好き人間としては、ちょっと興味をそそられたわけだ。
 ただ、自分は紙の本を否定するわけではなく、紙の本には紙の本の良さがあることは認めるものの、利便性から専ら電子書籍で読書をしている、という立ち位置なのだ。
 まず、本好きの悩みとして、紙の本では置き場に困る、というのがある。対して、電子書籍は記録媒体の容量の制約はあるものの、実質的にそれは無視できるだろう。
 次に、持ち運び・携帯性という点でも電子書籍に軍配を挙げる。いつでもどこでも読書したい自分としては、iPhoneだけで事足りる電子書籍は、まさにいつでもどこでも読書ができるのだ。電車通勤中はもちろん、トイレの個室、お風呂、などなど。iPhoneを携帯している限り、いつでもどこでも読書できるわけだ。
 一方、一覧性というか、読みやすさ、戻り読み、パラパラ読みなどは紙の本に分がある。電子書籍にはリンク機能やページジャンプ機能という紙の本には無い機能がもちろんある。だが、紙の本のパラパラ読みのスピードには劣るし、一覧性というか視認性といってよいのか、どう表現したらよいか分からない見やすさ・読みやすさのようなものが紙の本にはある。
 紙の本にはなく、紙の本と比較できない電子書籍の機能というのが、複数台に渡る端末で読書していてもどこまで読んだか、マーカーやメモなどが同期されるというものだ。これはどうやっても紙の本では実現できないだろう。
 マーカーやメモは紙の本でも、電子書籍でもできる。電子書籍では(Kindleなら)限られた分量ならマーカー部分をエクスポートしてまとめるのも簡単だ。ただ、紙の本のように、ページ内に自由に文字や図を書き込むといったことは(少なくともKindleでは)まだできない。
 読書再販制度のない日本では、新品なら紙の本はどこで買っても同じ値段だが、電子書籍は紙の本に比べて割安だし、セールなどで更に値引きされることもあり、財布に優しい。Kindle Unlimitedのような、紙の本にはない読み放題サービスもある(活用させてもらってます)。
 と、自分はこんなことを思いつつ、総合的に読書は最大限(電子書籍が手に入る本は)電子書籍での読書にしている。

 さて、本書を読んでみると、著者は必ずしも電子書籍を否定している訳ではないということがわかった。使い方、使う人次第、という論調ではあるが、古き良き紙の時代であるとか、紙であることの良さの根拠が個人的な思いのようなものが多く、説得力に欠けるように思えた。なぜ「紙の本」が人にとって必要なのか、ということの論拠がいま一つ自分には入ってこなかった。新しいものを受け入れないような誤解を招きかねない。