意外と早く実現しそう『量子コンピュータが人工知能を加速する』

量子コンピュータが人工知能を加速する
日経BP社 (2016-12-13)
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 この本を読む目的は、想定外に実用化スピードの早まっている量子コンピュータについて学ぶことだ。
 D-Waveのこと、量子アニーリング方式の量子ゲート方式との違いのこと、組わせ最適化問題のことが分かりやすく説明されており、分かった気になれた。ただ、量子アニーリングについては、なぜうまくいくかはまだ分かっていないらしい。量子ビット数と組わせ最適化問題に適応する場合の関係がわかった。
 量子アニーリング自体はアルゴリズムのことであって(シミュレーテッド・アニーリングとの対比)、従来型コンピュータでも実行できる。D-Waveのすごいところは、そのアルゴリズム、というか動作原理をハードウェアレベルで実装・実現したことにある。
 よく、原理や基礎理論は日本人研究者が!ということが言われるが、それを実現したり、実用化したりは先を越されてしまうのがなんとも残念であるし、日本の(日本人研究者の)根本的な問題ではなかろうか?
 それとともに、基礎理論、基礎的研究内容を実用化する(欧米の科学者、ベンチャー企業)の発想がやはり見習うべきではないか。

読書術をハイブリッドする!『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』

ソーシャル時代のハイブリッド読書術
C&R研究所 (2016-04-21)
売り上げランキング: 59,181
 紙と電子両方の読書をする自分にとって、ハイブリッド読書術というキーワードにピンときた。より良いハイブリッド術が得られることを期待し、学ぶことを目的とした。

 本書で紹介された書評項目に則って書いてみる。
1.購入の経緯は?
 Amazon Kindleセール対象商品として見つけた。紙と電子書籍、両方の読書をしている自分にとって役に立つ情報が得られそうだったから購入した。
2.本の対象読者は?
 紙と電子、両方の読書をしている人、またはどちらかだけの読書をしていてハイブリッド化によってこんなに恩恵がありますよ、という気づきを得たい人。
3.著者の考えはどのようなものか?
 紙と本のハイブリッドに留まらず、購入場所や書評共有、読書ノート、読書の場など多岐にわたるものについてハイブリッドすることを勧めている。
4.その考えにどのような印象を持ったか?
 考え方として共感できることも多く、自分にとっては今の時代には当たり前のように思う。それこそが電子書籍を活用している人だけの考え方なのかもしれない。本はやはり紙、という人、読書ノートもやはり紙のノート、購入はやはり実際の書店で、というこだわりを持った人も多いのだろう。自分としては、蔵書の管理、置き場、普段の持ち歩きの利便性、紙より安価に購入可であることから電子書籍を活用するようになった。読むのはやはり、紙の本の方がまだ上であるとは思うが、それを上回る利便性が電子書籍にはある。
 ソーシャルリーディングという概念、方法はやってみたいような気もするが、どこから始めるか?それが問題だ。まぁ、読書好きが集まる場所なんていくらでもあるだろけれど。やはり、匿名の場であっても、自分の考えを披露して、他者と語り合うのは抵抗があるな。
5.印象に残ったフレーズやセンテンスは何か?
“面白い、もっと理解したいと思った本にだけ実施してください。”
 これは、読書後のアクションのことを言っていて、つまり読書ノートを含むアウトプットのことだ。確かに、全部の本に必ずしも、読後アクションをする必要はない。ここにこだわりすぎてしまって(自分は特に)、アウトプットが滞ってしまうのはもったいない。読んで特に何も感じなかった、線も引かなかったら、それでいい。
6.類書との違いはどこか?
 電子書籍SNSも積極的に使うことを勧めながら、紙の本、ノートとのハイブリッドにこだわる点が違う。
7.関連する情報は何かあるか?
 ノート術や情報整理術(Evernote)などは、同著者のEvernote本に詳しいのだろう。Evernote、有料プランにしたものの、イマイチ活用できていない。本の引用や感想はMediaMarkerに今のところ集約してしまっているので。

教養を身に着け、頭脳を鍛える400冊『ぼくらの頭脳の鍛え方』

ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊 (文春新書)
 読書による頭脳の鍛え方を学ぶことが本書を読む目的だ。
 
学生時代、立花氏や駿台の大島氏の知識量に圧倒された。これが教養人かと。教養=liberalartsを身に着けた上で、自分の専門分野を持ちたいものだと影響を受けたわけだ。
 あれから10数年、今になって読んで、触れてみると、当時とは少し違った印象を受けた。立花氏はまだ理系的・自然科学的な素養(読書)もあるが、本書の対談相手の佐藤優氏は文系的な知識、教養に偏っている(文系・理系という分け方がそもそも教養人にとっては…だろうが)。そういう意味では少し、目指すべき人物像、教養像とは異なるかなと思った。まだ文系的な知識、特に歴史や政治方面には吸収したいモチベーションが沸かない。自分は、理系的教養?に比重のある教養人になりたいのだ。
 本書の内容は、両氏がそれぞれの読書などから得た知識を披露しあい、オススメ書籍を紹介するという感じ。対談相手が佐藤優氏であるからか、文系よりの書籍が圧倒的に多い。相変わらず、立花氏の知識量には圧倒されたわけだが。
 立花氏の読書本、オススメ書籍紹介本は他に何冊も出ており、様々な分野でこんな本があるのか、と知るきっかけになる。

できないことがなくなるためには、、『できないことがなくなる技術』

できないことがなくなる技術 (中経出版)
KADOKAWA / 中経出版 (2014-12-25)
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 本書によると、できる人、成功している人の「目に見える部分」は成功する要素のたった20%でしかなく、そのHow-toの部分だけマネてもできるようにならない。目に見えない、「考え方」や「心身状態」というDo-howという、どうやってやったのか?ということを学び、身につけないとできるようにはならないという。これをブレインコピーといい、成功者が「頭の中で考えていること」「感覚」「呼吸のリズム」といった「心身状態」までマネすることをいう。それを成功者に直接聞く方法が、ブレインコピーインタビューとのこと。
 この直接ブレインコピーインタビューをさせて貰える人をみつけ、ブレインコピーインタビューをどうやってやるのか、ということが詳しく説明されている。このインタビューをさせてくれる人を見つけられることが肝になってくるが、これが普通は難しい。自分がなりたい、目指したい人が自分の知り合いとしていて、自分はブレインコピーインタビューの手法を身に着けており、相手もそのインタビューを受けてくれる、という前提がそろわないといけないわけだ。
 本やDVDでもできるが、難しい、とさらっと述べられているが、一般の人にとってはこちらに頼らざるを得なく、こちらの手法を教えてほしいものだ。

エラーを見込んだ技術『ゲノム編集の衝撃』

ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー
NHK出版 (2016-07-27)
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 この本を読んだ目的は、ゲノム編集について知るためだ。既に1冊(『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 (講談社現代新書) 』)読んでいるが、同じ分野の本を複数冊まとめて読むのがいいというしね。

 この本では、『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 (講談社現代新書) 』では触れられていない説明もあり、読んでよかった。例えば、クリスパー・キャス9は修復ミスをするまで切断を繰り返すことで、結果としてノックアウトさせることができるという説明がそうだ。すると修復ミスを見越した技術ということになるな。生物の特性を活かした技術と言えるな。
 また、目的遺伝子配列と同じ(だが、意図しない)配列はありうるということ(オフターゲット)についても触れられていた。『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 (講談社現代新書) 』でわいた疑問に対する説明だ。

 従来の遺伝子組み換えがそれほど完璧でないこと、それに対してゲノム編集がまさに"編集"という精度で、簡便に行えるということがよりわかった。これは、本当に難病治療に実用化されていって欲しい。病気以外のデザイナーベビーが現実化しそうな点では末恐ろしくもある。

報告書・論文でも人を操りたい『人を操る禁断の文章術』

人を操る禁断の文章術
人を操る禁断の文章術
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かんき出版 (2015-02-06)
売り上げランキング: 1,341
 文章術、書き方の本を読みたい、読まねばと思っていた時にこのAudibleを見つけた。集中力を操る『自分を操る超集中力 』と同じ著者DaiGoの文章術書のAudible版だ。集中力の本ががなかなかよかったので、文章、作文能力をアップさせらることを期待して聴いたみた。自分の書きたい文章、作文は研究報告書などの科学技術文書だ。
 
 聴いてみると、論理的な文書を書くためのものではなく、書名にもある通り、人とのコミュニケーション(メールなど)や広告、ポップなどのための文章術であった。人の心をつかむ、人を思い通りにさせる、という文章のテクニックは学べそうだが、当初意図した目的(研究報告書など)に適うかというと、そうではないないようであった。
 ただ、報告書や論文、(予算獲得のための)申請書にももちろん読者はいるわけである。こういった文章でも読者を操れれば(読んで、申請書が通る、採用される、評価が上がる、など)いいのにな、と。

ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 (講談社現代新書)
 一般レベルでも聞くことが多くなった感のある「ゲノム編集」という言葉であるが、遺伝子組換えとはどう違うのだろうか?
 この本を読む目的は、ゲノム編集という最先端技術・クリスパーについて知るためだ。

 クリスパーの肝は、ゲノム編集技術の登場前は、編集したいDNAをタンパク質で認識していたのをRNAで認識できるようにしたこと。これで飛躍的に認識率が上がったということらしい。
 聞くと当たり前のように聞こえる。なぜなら、DNAは相補的塩基対でできているのだし、RNAは相補的塩基対をつかってDNAの情報を読み出しているのだから。これは高校生物レベルでも習うはずだ。ただ、そうやって機能するRNAが発見されたことが大きいのだろう。望みの場所を認識、切断できるようになり、ゲノム編集という文字通りの編集ができるようになったということらしい。
 そして、これまでの遺伝子組換えというのがいかに非効率的で確率の低いことをやっていたのだな、ということも本書で知ることができた。

 いかにゲノム編集といえど、塩基配列で認識しているのだから、望む配列とたまたま同じ配列であるが、意図しない部位はないのか、ということが気になった。(→オフターゲットというらしい)
 意図しないところが切断、編集されたらマズイのではないか?それは、ゲノム解読された生物では全塩基配列が調べられてるから、大丈夫なのか?

 ゲノム編集とは別のことも本書では知ることができた。例えば、既に異種移植(ブタの膵臓を人に移植)がされており、成功しているんだとか。しかも数例という規模ではなかった。ちょっと前に再生医療技術の調査の一環で異種移植を調べたことがあったが、異種移植はむしろ課題として認識していたから驚きだ。
 
 クリスパー発見の経緯の物語は非常に面白く、興味深く、素晴らしいと思った。エイズのメカニズムを研究していて、それがペストと類似性していることに気付いた。それならば、ペストを生き延びた人たちは突然変異によってそれに対する遺伝子があるはずで、それを利用できるに違いない、という流れ。すばらしい。

 ただ、悠久の時を経て進化してきたDNAを人間が改変していっても大丈夫か?進化すらも人自身の手によって進んでいくのか?ということが懸念される。