大人だって成長したいし、成長できる!『成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法』

成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法
 この本を読んだキッカケは、書名のダイナミックスキル理論というのに興味が湧いたからだ。成人の能力発達とその方法が学べることを期待して読み始めた。
 
 能力の発達段階、レベルが詳しくわかり、どうやって能力を伸ばしていけばよいかが具体的なワークとともに示されていた。伸ばしたい能力が自分でブレイクダウンできないと、成長理論に当てはめることが難しいのが難点だ。例えば、伸ばしたい能力はあるが、それがどんな能力からなるのか、どんな能力が成長するとその能力がアップしたことになるか、自分では分からないことの方が多いだろう。これを助けてくれるのが良き指導者、コーチという存在だろうが、これもそうそう簡単に出会えるものではない。

 とはいえ、自分でできるだけブレイクダウンしてみて、ダイナミックスキル理論のもとに実践してみることにする。ミクロ、メソのレベルアップを実感することから始めようと思った。
 
 本書のワークを自分なりに、テニスに当てはめてやってみたのは以下の通り
伸ばしたい能力
テニスの試合で勝てる能力
サブ能力: サーブ確率、ストローク、ボレーの安定性という基本技術。プレッシャー下での判断力、冷静さ、状況把握力。メンタル力、メンタルタフネス。
状況: レッスンでの練習を含む、ポイントのかかった試合、ゲーム。特に出場料を払って出る試合。
理由、必要性: 試合になるとできない、勝てない、をなくして勝利を挙げたい。ノンプレッシャー下でできることをプレッシャー下でもできることを増やしたい。
課題: プレッシャー下でサーブを入れる。むきにならない。あきらめない。ポイントパターンを分析する。ラリー中も同じ球種ばかり打たない。相手の弱い部分、嫌がることを容赦なくする。
感情: むきになる、冷静さを失う、差がありすぎるとあきらめ、勝気・モチベーションが乱高下する。目の前のポイントに集中、注力する。こうありたい、こうはしない、という思い、理想が強すぎると、理想と現実とのギャップで、こんなはずでは、とう思考にはまり、抜け出せなくなる。
実践プラン: 球出しでも、常にどんな状況で、どんなショットを打つか想定、意識する。漫然と打ち返さない。ポイントが絡んだ練習は、試合の緊張感をもって臨む。

仮説を立てる、議論する能力
サブ能力: 論理的思考力、仮説創出力、
状況: 日々の業務・研究の場で
理由、必要性: 結果を述べるだけで、なぜなのか?を語れていない。間違っていたら、を気にしすぎなのが原因か。仮説はほとんど誤りで、間違っても問題ないとわかっていながらも仮説が立てられない。仮説を立てて、仮説検証プロセスに移行できるようになりたい。
課題: 発表するとなると間違いを恐れている。自分の中だけでも、そうじゃないだろ、とすぐ棄却してしまう。
感情: 自信なし、不安、間違いに対する不安、間違えたくない
実践プラン: 手元にある結果をもとに、現象を説明する仮説を立ててみる。仮説を検証する方法もあわせて立ててみる。新たな結果、検証方法の結果を合わせて仮説をブラッシュアップする、もしくは新たな仮説を立てることを続ける。

他人を巻き込む能力
サブ能力: コミュニケーション力、統率力、リーダーシップ力、関係性構築力、交渉術
状況: 普段の仕事
理由、必要性: どうも億劫になってしまう。自分だけでなんとかしようとしてしまう。できないとしょうがない、としてしまう。本当は声をあげて、他人を巻き込むことで解決できる課題も多いはず。
課題: なぜか億劫になる。後で、まとまったら、迷惑かもと遠慮してしまう。
感情: 面倒くさい、億劫、気兼ね
実践プラン: メールでもよいので、思いついたら溜めておかないてすぐに協力を仰ぐ。

成果をアウトプットする能力
サブ能力: 文章力、アウトプット時期判断力、研究マネジメント力、課題発見・解決力
状況: 普段の仕事、業務
理由、必要性: インプットするだけではだめ。アウトプットするのは自分のためでもある。むしろ自分のためだと思うとモチベーションがわきそう。報告書を書いても誰も読まない、報告しないけど工数かけてることは評価されなくてもよい、ではなく、自分の成長のためにアウトプットを増やす。
課題: 自分のためにもなるという観点の気付き。インプットばかりしてしまう。面倒くさくなる。
感情: 面倒くさい
実践プラン: 今まとめられそうなテーマをピックアップし、報告書を作成する。結果でないなら、手法、方法論マニュアルでもよい。手法、方法論はまとまった内容になる前に確立しているはず。

生態学的妥当性
テニスの手出し、球出しは変動性の無視された生態学的妥当性の低い練習
生態学的妥当性2
打つ時に、黄色信号、青信号ボールと想定して、自分でどういうショットを打つ状況か想定して打つとよい。例えば、攻めのショット、コースを変えるショット、回転量を変えるショット、高さを変えるショット、など

テニスの状況パターン練習は生態学的妥当性の低い練習

生態学的妥当性5
テニスの状況は自分の打ったショット、相手に打たれたショットによって作られる。パターン練習は既にその状況ができた後の練習。例えば、チャンスボールが上がった、ロブが返ってきた、アプローチを打てる状況から始める、始まる。実際は、その前のショットで、自分が相手を追い込んだからチャンスボールが上がってくる、返球が浅くなる、ロブで返してくる、など。状況を作るショットを打つところから始めるパターン練習で生態学的妥当性を上げられないか?
 
その他の状況として、
•単なるポーチ練習ではなく、選手のバックサイドにファーストサーブを打ってからポーチに出る練習なら、意図したところにサーブを打つコントロールの練習を、意図したところに打てないと練習がポーチまでいかないというプレッシャー下で行える。
•相手を崩すショットを打って、チャンスボールを打つ状況練習にすると、相手は強打に対していかにしのぐかの練習、崩す側は攻めが甘いと逆にやり返される、チャンスボールが上がらない、ロブで逃げられる、ということになる。まずは、数球ラリーをして、どちらからでも仕掛けてよい状況から始めてもよいかもしれない。
•ワイドサーブを打つことだけを限定した状況練習。リターンはサーブが甘いとストレート打ちやすい、ボレーヤーはストレートケア。

能力の点→線→面→立体
・テニスの試合で勝てる能力 
点: 手出し、ラケ出しで基本技術ストローク・ボレー・スマッシュをコート内に打ち返すことができる。サーブをサービスボックスに入れられる。
線: 相手と基本技術で限定的な状況(始めからボレスト、片面ストレート、クロスコート、ロブ&スマッシュラリーができる。数回はミスなく、コート内に入れてのラリーができる。
面: 基本技術でのラリーを10往復以上続けられる。パターン練習でポイントマッチができる。パターン練習に必要なアプローチ、アングル、ショートクロス、ドロップ、ロブなどの副次的ショットが打てる。サーブのコース打ち分けがある程度できる。
立体: これまでの技術を用いて、自ら状況を作り出し、あるいは相手に作られた状況で試合ができる。ある程度の状況には練習で身につけた技術で対応できる。
↓次階層
点:

テニスの試合に勝つとはどういうことか?
積極的に意図的に状況を作り出す場面で状況を作り出すショットを打つ。相手に作られた状況に応じたショットを選択し、相手が作った状況を変え、崩すことでポイントをとる。

仮説を立てるとは?
今ある素材、結果から、論理的破綻なく現象を説明、記述できる説明を構築すること。また、仮説は、仮説が正しいかどうか検証できる新たな実験、計算を示唆できる形のものであり、仮説を支持する結果が出れば仮説の妥当性が高まり、仮説では説明できない結果が出た場合には、仮説の再考を促すものでなければならない。

他人を巻き込むとは?
他人を巻き込むとは、個人、チーム、組織の利になるように、関係ない人、同じように利になる人、現状は関わりのない人に協力してもらえるようにすること。相手にとっても利になればよいが、そうでない場合も工数を割く気になるように、説得し納得してもらえるコミュニケーション力が必要。相手に遠慮、気後れしてアクションを起こさないようにならないために、ある種の大胆さ、行動力も備わっていなければならない。巻き込んだことによって、こんな利があった、巻き込んだけど、利にならなかった、などの結果の説明責任も生じてくるだろう。

成果をアウトプットするとは?
インプットに対してアウトプット、例えば読書、勉強でインプットして得た知見を実践し実生活、業務に活かすこと。研究で得た知見を、報告すること。週報形式は進捗のアウトプットだが、それだけでなく、ある程度まとまった場合、テーマが終了した場合にはそれまでの内容を文書としてアウトプットする。ある程度まとまった、という段階を判断することも必要となる。